トランプ大統領のウクライナ疑惑と弾劾制度について! 

トランプ大統領にウクライナ疑惑が持ち上がり、米議会で弾劾、訴追されそうな気配になってきました。

9月24日、ペロシ米下院議長は、米下院においてトランプ大統領の弾劾調査を開始することを公式に発表しました。

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以前はロシア疑惑などと、さまざまな疑惑が持ち上がるトランプ大統領ですが、一体何があったのでしょうか。また弾劾とはどのようなことなのでしょう。

本稿ではトランプ大統領のウクライナ疑惑とはどういうことなのか、また普段あまり聞き慣れない弾劾制度とは何か、ごく簡単に分かりやすくまとめてみました。

はじめに弾劾制度から解説して参ります。

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弾劾制度とは

弾劾制度とは身分保障された官職にある公務員を義務違反や非行などの事由で、議会において訴追し、その責任を追及すると共に罷免または処罰することのできる手続きのことを言います。

弾劾手続きは法令により定められており国によって異なり、弾劾する対象もすべての公務員という訳ではなく、国により違いがあります。

弾劾の対象は

アメリカ合衆国の弾劾制度では大統領、副大統領及びすべての文官を弾劾の対象としています。

合衆国憲法第2条第4節
「大統領、副大統領及び合衆国のすべての文官は、反逆罪、収賄罪又はその他の重罪及び軽罪につき弾劾され、かつ有罪の判決を受けた場合は、その職を免ぜられる」

ちなみに日本では裁判官と人事官についてはそれぞれ弾劾手続きがありますが、国会議員や首相についての弾劾の規定は有りません。

弾劾の決定は

アメリカ議会の定数は下院議席が435名、上院議席が100名で構成されています。そのうち下院の定数435名の過半数が弾劾条項といわれる訴追を支持すれば、上院において弾劾裁判が行われることになります。

現時点で、下院435議席中、民主党は235議席を占めており、そのうち弾劾を支持している民主党下院議員は少なくとも218人と言われていることから、仮に共和党の協力がなくても民主党単独で弾劾決議は可能であり、弾劾裁判に持ち込める状況にあります。

弾劾裁判では、上院の出席議員の3分の2以上が有罪の判断を出すと大統領は罷免されます。

有罪判断は刑事裁判と同じ程度に、疑義が生じる余地がないほど完璧に容疑が立証されることが要求されます。

現在の上院の議席状況は共和党53議席、民主党45議席、無所属2議席という構成で無所属の2議席はほぼ民主党寄りの行動をしますが、それでも共和党が優勢な状況です。

民主党としては有罪を引き出せる確固たる有力な証拠を提示できるかどうかになります。

弾劾制度の意味

弾劾制度は強い権力の座にいる身分保障された公務員の不正や非行を議会によりあばき、その責任を追及することに意味があります。

アメリカのこれまでの歴代大統領では、ウォーターゲート事件でニクソンは下院での弾劾訴追と上院での有罪の見通しが確定した時点で自ら辞任し、他に第17代ジョンソン、及びクリントンは弾劾訴追を受けるも罷免は免れています。

次に、今回トランプ大統領が弾劾を受ける経緯についてお話します。

ウクライナ疑惑とは

ウクライナ疑惑は7月25日のトランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領との電話会談から始まります。

内容は、ゼレンスキー大統領に対して次期大統領選での自らの再選の支持を持ちかけると共にその際の民主党の有力な政敵バイデン前大統領の息子のウクライナにおける汚職疑惑の捜査を要請したということでした。

現在、ウクライナ経済は破綻に瀕しており、それを克服しようとEUへの加盟を切望している苦しい状況にあります。それを知りながら、すでに議会で承認されていた430億円のウクライナへの援助資金を事前に自己の判断でストップした上での要請でした。

これは実質的に援助資金を交換条件としたウクライナへの圧力に他なりません。

このような電話会談の内容が匿名の人物により告発され問題が発覚しました。

電話会談の内容はホワイトハウスが公表し、ほぼ事実であることが判明しています。その後会話記録は機密度の高いレベルに移管されており、これはトランプ陣営の情報隠蔽工作ではないかとされています。

ロシア疑惑との共通点は

以前のロシア疑惑とはどのような共通点があるのでしょうか。

ロシア疑惑とは

ロシア疑惑はロシアがサイバー攻撃やSNSを始めとするあらゆる手段を用いてアメリカ大統領選挙に介入し、狙った有力候補を陥れる目的で、選挙戦で不利となる情報を入手し拡散、創作するなどの手口で投票者に疑心暗鬼を起こさせ、選挙結果に影響を及ぼしたというものです。

そしてその後のトランプ大統領の行動からこうしたロシアの大統領選挙介入とトランプ大統領自身の関与が疑われることになりました。この一連の出来事はロシア疑惑と言われています。

この疑惑については本年3月にミュラー報告書によリ一応の決着がついています。

報告書では、

  1. ロシアによる大統領選挙介入は確実にあったこと、
  2. トランプ大統領の司法妨害については現職大統領であることから棚上げすること、
  3. ロシアとトランプ大統領との共謀は立証されなかったこと、

などの内容となっています。

ロシア疑惑との共通点は

仮にトランプ大統領にそうした思惑があったとしたら、有力な政敵のスキャンダルを掘り下げ、陥れようという点でロシア疑惑と手口が共通しています。

その目的のために他国の大統領に圧力をかけて確たる証拠を握ろうとしたことです。スキャンダルは政敵を陥れるには恰好の材料となります。

分かりやすい共通点は、トランプ大統領が要請したかどうかはともかく、どちらも図式的には他国による選挙介入になることです。ただウクライナ疑惑の場合は関係者が少ない分真実の糾明も容易かもしれません。

おわりに

一国の大統領にはそれ相応の人間としての資質が求められます。

大統領選の候補者たる人物が私利私欲のために政敵のあら捜しをして陥れるという事実があったとしたら、アメリカ合衆国国民にとってはなんともおぞましく、寒々しいことでしょう。

トランプ大統領に弾劾カードを突きつけた野党民主党に対してトランプ大統領は、外見上は余裕を見せながらも、内心はロシア疑惑の時以上に激しく動揺しているようにも見えます。

2020年11月の次期大統領選は与野党間で、現在すでに水面下で激しい鍔迫り合いが始まっているようです。

この10月時点で、来年の大統領選挙での民主党の候補者について、ウォーレン上院議員の支持率がバイデン前副大統領を僅差で上回ったそうです。

今度はウォーレン候補のあら捜しが始まるのでしょうか。他国のことではあるとしても、今回のウクライナ疑惑が根拠の無いものであることを祈らずにはいられません。