香港デモにまつわるキャセイ航空の企業体質とCEOの辞任とは…!

香港デモのあおりでキャセイ航空の最高経営責任者(CEO)が辞任しました。 中国当局の圧力によるものです。

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キャセイ航空は誰もが知っている有名な航空会社です。そこのCEOがどうして辞任する事態になったのでしょうか。

本稿ではキャセイ航空とはどういう企業なのか、今回の出来事と香港デモとの関わりについて調べてみました。

はじめにキャセイ航空から解説します。

キャセイ航空とは

正式名称はキャセイパシフィック航空になります。 航空運送業をしていた米国人と元パイロットのオーストラリア人で、1946年にキャセイパシフィック航空を創立したことが始まりでした。

キャセイパシフィック航空は香港を代表する航空会社で、英スカイトラック社による航空会社の格付けでは最高評価を得ています。

主な株主に香港の財閥、スワイヤー・グループや相互に資本提携をしている中国国際航空(エアチャイナ)などがあります。従業員数は27,000人、保有機数は発注分もふくめて149機。

2018年度の売上高規模は1.5兆円になります。ちなみに日本航空は1.3兆円、全日本空輸は1.8兆円です。

アライアンスはワンワールドに加盟しています。

アライアンスとは?
複数の航空会社が提携して世界的な航路のネットワークを構築することです。
この提携グループのことをアライアンスといいます。スカイチーム、スターアライアンス、ワンワールドが世界の3大アライアンスと言われています。

キャセイパシフィック航空と中国政府との関わりは主に中国の領土である香港を拠点として活動している点にあります。

次に香港デモの経緯について簡単に解説します。

香港デモの経緯

香港デモとは、逃亡犯を中国政府に引き渡すことが可能となる「逃亡犯条例」の改正案に反対し撤回を求めた香港市民の大規模デモのことです。

香港行政当局はこの改正案を撤回せずに延期する方針を堅持していることから、デモは収束の気配もなく続いており、人数も数十万から、時には100万人近い規模に膨れ上がっています。

当初は都市部でストライキなどの示威行動をしていたものが、次第に暴徒化し香港国際空港をバリケード封鎖するなどの行動にでました。香港国際空港は香港と国際社会をつなぐ重要な場所です。

この暴挙によりキャセイパシフィック航空も欠航を出すなどその機能を停止する事態になりました。世界の大玄関での機能停止は国際社会に香港デモに対する大きなマイナスイメージを与えたことでしょう。

裁判所はデモ隊に対して空港の利用妨害や指定場所以外での抗議活動を禁じる臨時命令を出し、セキュリティー検査を強化してデモ隊の侵入を防ぎ、空港の機能回復に努めました。

キャセイ航空の企業体質

これ以前にキャセイの従業員がデモ隊の一員として警察と衝突し、暴動罪で起訴される事件が複数件起こっています。

非番であればデモに参加する事自体は何の問題もないはずですが、これがデモ行為を逸脱した暴力行為であれば話は別です。中には破壊行為を動画で撮影されており、訴追された職員もいたようです。これなどは特定の思惑のもとに当局にマークされていたものと思われます。

キャセイは他にも少なからずの職員がデモやストライキに参加し、それが原因で欠航や業務停止などが相次いだ経緯があります。当局に恰好のプロパガンダの材料を与えています。

自由と民主主義を守るべく立ち上がることはともかくとして、航空会社としての社会的責任を放棄するならば世界の支持は得られません。当局はこの点を見逃しません。

中国の圧力

中国当局はキャセイに限らず、従業員のデモ参加を容認するとみられる企業に目を光らせています。香港返還後も50年は一国二制度が尊重されるはずでしたが既にこのような監視が始まっています。先進諸国ではあり得ないことです。

中国民用航空局(CAAC)は9日、キャセイに対し、デモ活動を支援した従業員の中国本土便の乗務や中国領空の通過を禁止し、中国本土便に乗務する乗員全員の情報を提出することを求めました。

さらにキャセイに対して中国本土便の運航の停止を含ませており、国内的には企業などにキャセイ便のボイコットを呼びかけているようです。いかにも中国らしい対処です。

キャセイ航空CEOの辞任

キャセイにとって中国本土便はドル箱の主力路線であり、従わないわけにはいきません。

キャセイは7月に起訴・告発されたパイロットらと個人情報を漏らしたとされる職員4人を解雇しました。さらに中国側が要求している新規制に応じるとともに、香港政府への支持を表明しました。

しかしそれだけの譲歩では中国当局の圧力を阻止できなかったようです。恐らくは次々とキャセイ側に不利な状況が出現したものと思われます。50年もの長きに亘って西欧風自由主義を謳歌してきたキャセイにとって、閉ざされた体制の恐ろしさに対する免疫力はありませんでした。

キャセイパシフィック航空は8月19日付で最高経営責任者と最高顧客・商務責任者が辞任することを発表しました。

おわりに

成田から香港行きの離陸を待つキャセイ航空の機内でのこと、離陸時間と香港のデモの状況を説明するパイロットの機内アナウンスが流れたそうです。

出発を待つ機内ではここまではごく普通の流れですが、放送の最後にそのキャセイ航空のパイロットは、なんと声高に香港デモの支持を表明したそうです。

事ここに至ると、この航空会社の企業体質が問われます。

自由と民主主義は力で潰されてはならない普遍的な価値であり、支持を表明するのは分かるとしても時と場所があるはずです。あまりにも状況判断が欠如しているように思われます。

デモにしても守るべきルールがあります。これが暴動に発展したら周囲の支持は得られないばかりか、かえって当局を利することになります。

香港デモが成功するには国際社会の支持が不可欠であり、国際社会に訴えることが肝要です。この辺りのキャセイ航空の社内的な教育と啓蒙に体質的な問題があったように思われます。

キャセイ航空CEOは辞任の際に、「私が責任を負うのは妥当だ」と述べたそうですが、本人の言うとおりに妥当なことだったのかも知れません。

香港国際空港は8月15日現在、ほぼ通常の運航状態に戻ったようです。