WTOの発展途上国優遇措置とその問題点について!

最近「WTO」という言葉がマスメデアを賑わしています。大抵「トランプ大統領」というキーワードと絡み合って出てきます。そのトランプ大統領は中国や韓国を名指しで非難しています。

要旨として、両国がWTOで「発展途上国」と申告して優遇措置を受けるのは不公正であるというものです。

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中国は当然のように反発しています。このルールを是正する目処は立っていません。
なぜ是正できないのでしょうか。また詳しくはどのようなトランプ大統領の指摘なのでしょうか。

本稿ではWTOの発展途上国優遇措置とはどのようなものなのか、またその問題点について分かりやすくまとめてみました。

はじめにWTOからお話します。

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WTOとは

WTOは、1995年1月1日に設立された国際機関で、世界貿易機関 (World Trade Organization)の略称です。

自由貿易を促進し、貿易に関する様々なルールを定め、貿易上の紛争を裁定し、問題を解決する役割を果たしています。

このような役割は1947年に設立されたGATT(関税及び貿易に関する一般協定)が果たしていましたが、あくまでも暫定的な組織でした。

その後の経済の飛躍的なグローバル化と多角化への対応、更に貿易上の紛争にも対処できる常設的な国際機関が望まれていました。

その結果、GATTの機能を更に補強、拡充し、非関税措置や知的所有権などモノ以外の新たなサービス、紛争処理の迅速化と実効性の確保などに対応できる強固な国際機関が設立されました。

本部はスイスのジュネーブに置かれ、640名の職員で運営されています。年間予算は約2,217億円。日本の分担金は約254億円です。加盟国数は164ヶ国(2017年)

このWTOのルールに発展途上国優遇措置があります。

WTOの発展途上国優遇措置とは?

WTOのルールでは一国が発展途上国であるかどうかの判断はその国の自己申告制によります。

極論をいいますと富める国が発展途上国として自己申告をするとそのまま通ることになります。そして発展途上国には優遇制度があります。

自由貿易を促進する立場からできる限り多くの国々がWTOに参加することが望まれますが、加盟を希望する国々の中には、WTOのルールに従うと国の産業が破綻をきたすようなところもあります。

WTOはこうした経済状態の不安定な発展途上国には「特別かつ異なる待遇」を与えて途上国の経済開発を支援しています。

すなわち補助金や関税面での規制の緩和といった多くの優遇措置が受けられます。そのうちの主なものとして関税免除と貿易自由化の義務免除について解説します。

関税免除
加盟国ならばどこに輸出しても発展途上国であれば関税は免除されるというルールです。

これにより途上国は有利な貿易を行うことができます。途上国の貿易額の増大が期待されます。ガットの時代にも関税面での税率に配慮がなされていましたが、WTOではさらに効果が強まりました。

貿易自由化の義務免除
もともと貿易の自由化は世界経済の持続的成長には欠かせないことで、保護貿易はこれを損ねるものです。そのため加盟国は貿易を行うにあたって国が制限を加えたり、保護するなどの干渉をしてはならない義務を負います。

しかし経済が未だに弱体で不安定な発展途上国についてはその義務が免除されます。加盟国との貿易において特定の自国産業を保護するために関税をかけることも容認されることになります。

このような優遇措置は発展途上国に適用されるルールであり、トランプ大統領が指摘する公正を欠く事態がどうして起こったのでしょうか。

この理由を考えるにあたって次項ではアジア諸国のGDPと人口を挙げてみます。これにより各国の国力が判断できるかと思います。

アジア諸国のGDPと人口一覧

はじめに2018年におけるアジア諸国の名目GDPと人口の概数を挙げます。

   国  GDP 人 口
米  国2,170兆円3億2,400万人
中  国1,420兆円13億7,400万人
日  本527兆円1億2,600万人
インド289兆円12億6,700万人
韓  国172兆円5,000万人
台  湾62兆円2,300万人
香  港39兆円740万人
フィリピン35兆円1億人
ベトナム26兆円9,500万人
シンガポール38兆円560万人
メキシコ130兆円1億2,460万人

※参考:世界経済のネタ帳

ざっと見た限りでは中国は言うに及ばず、韓国も今日ではアジアで4位を占める経済大国です。富裕な国と言えます。こうした富める国がどうして発展途上国として自己申告するのでしょうか。

その理由は、WTOが設立されて既に25年近く経っています。これらの国々はその間に目覚ましい経済成長を遂げており、そのままの趨勢で今日に至っています。

WTOに対する申告もWTO発足当時のままに、申告手続きは事務的、機械的に行われており、誰からの指摘もないことを幸いに特定国家の思惑のままに今日に至った結果と思われます。

ではこれらの国々は、25年前のWTO発足当時ではどのような状況だったのでしょうか。現行レートによる概算値を挙げます。

1995年の名目GDPと人口の概数

   国  GDP 人 口
米  国809兆円2億6,600万人
中  国78兆円12億1,100万人
日  本576兆円1億2,500万人
インド39兆円9億3,700万人
韓  国59兆円4,500万人
台  湾30兆円2,100万人
香  港15兆円600万人
フィリピン9兆円6,800万人
ベトナム2兆円7,200万人
シンガポール9兆円350万人
メキシコ38兆円9,400万人

※参考:世界経済のネタ帳

WTO発足当時のGDPを見ると中国にしても韓国にしても今日とはかなり落差があります。

加入時期はそれぞれ異なるとしても発展途上国としての加入によりその優遇措置の恩恵で大きな経済成長を遂げて今日に至り、トランプ大統領に指摘を受けたということになります。

こうした不公正に関するトランプ大統領の指摘は正当と思われます。本来ならばWTO内部で「発展途上国からの脱皮」のルールを作成して管理しなければならないところです。

WTOの問題点

発展途上国かどうかの客観的な判断基準を明確にし加入時の判断はWTO側がすべきと考えます。そもそも自己申告制に問題があリます。

その上で当初は途上国であってもその後の経済成長によっては発展途上国から「脱皮」させるためのルールも必要となってきます。きちんとしたルール作りと管理が望まれます。

その他に問題点は、パネル(小委員会)手続きや各種採択に際して「逆コンセンサス方式」を採用していることがWTO加盟国全体の不利益に働く場合があります。

これは全会一致の反対がなければ了承されるという採決方法で、10人中9名が反対しても1名が賛成すれば了承されることになります。

こうした採決方法は流れの迅速化にはつながるとしても不合理な結果に終わる可能性も否定できません。

仮に中国があくまでも発展途上国であることを主張して発展途上国からの離脱を拒否した場合、公正を取り戻すべくルール変更をしようにも全会一致が必要になります。こうしたことからルールの作成も目処が立たなくなります。

そして重要なことはWTOにおいて、紛争処理の判断に携わる各委員の選出、特に上級委員の選出には特定国の思惑が反映されないようなルール作りが求められます。この辺りに問題があるような気がしてなりません。

おわりに

台湾の蔡英文政権はWTOにおいて、自ら「発展途上国」としての優遇策を放棄し、「先進国」として参加する方針を打ち出しています。

あれこれと残念な国が多い中で、一国の政権が違うだけでこれだけ人を清々しい気分にさせてくれます。

本来は困難な事情のある国が申告する優遇策であり、先進国は一致団結して貿易を通じて途上国の経済成長、発展を支えようというスタンスであるはずです。

発展途上にあり苦労している加盟国に対する温かい配慮と共に、自国の経済に対する確固たる自信がなければできないことではないでしょうか。

これが国家の品格ということなのかも知れません。