ニューヨーク州の大陪審は3月30日、トランプ前大統領が2016年大統領選中の不倫騒動をめぐる口止め料に関する違法行為に関与したとされる疑惑でトランプ氏を刑事訴追することを決定しました。
大統領経験者が刑事訴追されるのは合衆国史上初めてのことになります。
ここで大陪審というキーワードが出てきますが、はじめにアメリカの陪審制について分かりやすくお話します。
陪審制とは!
陪審制とは一般市民から選ばれた陪審員が裁判官から独立して、争点となっている問題についての審理判定をし、犯罪として起訴するか否かを決定する制度です。その評決は全会一致が原則になります。この時もしも全会一致が得られなければ裁判は「再審理」としてやり直しになります。
米国の陪審制度は、大陪審と小陪審に分かれており、それぞれ陪審員の構成人数が異なります。さらに民事と刑事に分かれています。普通、陪審というのはこの小陪審のことを指し、12名で構成されています。
大陪審は争点となっている問題の性質が国家の存亡に関わるような重大且つ大規模な場合に発動されます。陪審員は23名で構成されます。
トランプ元大統領はこの大陪審の刑事訴追において全会一致で起訴が決まったということになります。
ではその争点となっている問題はどのようなものなのでしょうか。
トランプ氏の罪状は?
訴追内容については4月2日現時点では公表されていません。
米CNNテレビはトランプ氏は30以上の不正に絡む罪状で刑事訴追されたと報じています。
具体的な罪状についてはトランプ氏が出頭の際に明らかにされるでしょう。
検察側も起訴する以上は完璧なほどの関係資料や証拠を準備しているのでしょうが、それにしても30以上もの疑惑をよくも調べ上げたものです。
一方トランプ陣営は当然反発します。しかし火のないところに煙は立たないたとえのごとく、トランプ氏にとっては苦境に立たされることになりました。
トランプ氏の30以上もの「グレーな行為」に関与してきたという事実を米国民はどのように受け取るでしょうか。
起訴決定の意義とは!
数々の疑惑が噴出するような人物が大統領として君臨することの是非が問われます。今回の起訴決定はたとえ大統領経験者であろうとも、法の支配は免れないことを世界に示した点で評価されると考えます。
一方、トランプ氏は2022年の年末には2024年の大統領選挙への出馬をいち早く表明しています。起訴の判断は度々延期されてきた経緯がある中で、あと一年で大統領選が始まるというこの時期にこうした起訴決定が突然のようになされたことは偶然の流れだったのでしょうか。
トランプ陣営が主張するようにこれが政治的な「魔女狩り」であるならば、今回の起訴決定は民主主義の根幹を揺るがす大失態といえましょう。
米国の民主主義は消滅したことを世界に示したことになります。
まとめ
トランプ陣営にとって、今回の起訴が2024年の大統領選に必ずしも不利に作用するとも言えません。
この人のことは2017年の大統領選にしても大方の予想をくつがえして当選するなど、常に予測のつかない結果が伴います。
いずれにしても2024年の大統領選に臨んで、米国民としては、大統領候補者の施政方針に真剣に耳を傾け、更に大統領としての適性を冷静に分析した上で投票することが求められるでしょう。