内戦後の台湾と中国の現状、そして台湾の自由と民主主義の行方について!

日中戦争終結直後より本格的にはじまった中国大陸における国民党と共産党の内戦の結果、1949年に蒋介石率いる国民党は台湾に本拠を移しました。

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あれから70年以上の年月が経過しています。現在の台湾と中国の現状はどうなっているのでしょうか。

台湾は日本とホルムズ海峡を結ぶ生命線の途中に位置します。

今後の台湾の自由と民主主義の行方は東アジア諸国はもとより日本にも重大な影響を及ぼすことであり、注視しないわけにはいきません。

本稿では国共内戦後の台湾と中国の現状を分かりやすく解説し、さらに台湾の自由と民主主義の行方について考えてみました。

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内戦後の経緯

1949年、台湾に退いた国民党の蒋介石はすきあらばと、虎視眈々大陸反攻の機会を伺っていました。この時点では中国と台湾は相互に「一つの中国」の認識のもとに敵対関係にありました。

この間両軍にはいくどか偶発的な交戦がありましたが、大きな戦闘には至りませんでした。それはアメリカの監視によるものでした。

アメリカとしては共産党には危機意識があり、何とかして台湾の国民党が民主的な東アジアの勢力として温存されることを願っていました。

そのため蒋介石の大陸反抗の意図を思いとどまらせるなど、両軍が全面戦争にならないように仲介した経緯があります。

内戦後の台湾と中国の現状

大陸での内戦に敗退し、国民党軍が台湾に逃れ本部を置くと台湾には戒厳令がしかれ、土着の台湾の人たちは厳しい思想統制などにより徹底して抑圧されます。

台湾は当時、農村地帯の疲弊が著しく対策が望まれていました。これを解決すべく、蒋経国総統はアメリカ留学帰りの農業政策の研究者、李登輝に目をつけます。

李登輝は私心のない高潔な人でした。すぐに蒋経国総統の全面的な信頼を得ることになります。

李登輝は国民党に入党し政治の世界に足を踏み入れます。台湾における世界に類のない奇跡的な民主化革命はここから始まりました。

内戦後の台湾の現状

李登輝総統
1988年1月、中国が台湾の孤立工作を世界中で推し進めている中で、当時台湾総統の蒋経国が死去すると副総統であった李登輝が台湾総統に就任しました。

李登輝は内政面では刑法を改正して言論の自由を確立するなど、これまでの抑圧的な施政を廃し台湾の近代的な自由と民主主義政策を革命的に推進していきます。

大陸に対しては台湾との関係は「特殊な国と国の関係」であり、一つの中国という観念を捨て、台湾は独立した国家であるという2つの中国観を提示しました。

台湾危機
当然中国は激しく反発します。台湾で総統選挙がはじまると台湾海峡で軍事演習を行い恫喝を開始します。そのうち大きなものは1995年に起こった中国の広範囲の陸海軍演習があります。

これに対してアメリカのクリントン政権は台湾海峡に複数の米空母機動部隊を派遣して牽制し、中国の意図をくじきました。台湾海峡危機と呼ばれています。

中国にとって台湾はあくまでも自国の一領土であるわけです。

蔡英文総統
2012年の総統選では国民党の中国寄りの馬英九に敗れはしましたが、2016年の総統選で初当選し台湾初の女性総統が誕生しました。

もともとは李登輝の法律顧問を勤めていましたが李登輝の築いた台湾の「自由と民主主義」の思想を確定させ広く世界に知らしめた政権と言えるかと思います。

大陸からは多くの嫌がらせと恫喝を受けてはいますが、断固として台湾の「自由と民主主義」を堅持する考えを表明しています。

内戦後の中国の現状

国共内戦以来特筆すべきは共産党すなわち中華人民共和国の飛躍的な発展です。アメリカとも国交を回復し国連の安全保障理事会の常任理事国となっています。

中国の国力の増強は著しくこの7~8年で質、量共に飛躍的に伸びています。ハイテク技術においてはアメリカが危機感を抱くほどに進化しました。

最近ではアメリカを意識してか大規模な空母や戦闘機などの軍備に国力を集中させています。

中国の習主席は年頭における演説で台湾への武力行使を放棄しない方針を示すと共に中央軍事委員会では軍事闘争の準備を軍首脳に命じています。

意に沿わない相手は暴力と恫喝で潰そうという意図が明瞭に伺えます。

それでは次に両国の経済規模の目安としてGDPと人口を挙げ、軍事力について概説します。

台湾と中国の国力

2018年における中国と台湾の名目GDPと人口の概数を周辺諸国と共に挙げてみました。

両国の経済規模

GDPについて中国は世界第2位、台湾は第21位に入っています。

  国   GDP   人 口
 米 国  2,177兆円     3億2,400万人
 中 国 1,424兆円  13億7,400万人
 日 本     528兆円     1億2,600万人
 インド     289兆円    12億6,700万人
 韓 国     172兆円          5,000万人
 台 湾      63兆円        2,300万人
 香 港      39兆円           740万人
 フィリピン      35兆円       1億   人
 ベトナム      26兆円         9,500万人

※参考:世界経済のネタ帳

両国の軍事力概説

中国は核保有国であり経済規模もさることながらハイテク技術での躍進が著しく今や高度な能力を持つ航空機や艦船を自国で生産できる程になっています。

毎年軍事支出を増やしており、その軍事力は周辺アジア諸国の脅威となっています。

一方台湾は経済規模相応の陸海空軍力を保持してはいますがやはり劣勢は否めません。

最近では強大な中国を牽制すべく、アメリカのトランプ政権は「台湾関係法」に基づき、台湾に対して100両超の最新鋭の戦車や250基の携帯式対空ミサイルなど2,400億円規模の武器の売却を決めています。台湾にとっては強力な軍事力の補強になります。

台湾関係法

台湾関係法は1979年1月に米カーター政権が中華人民共和国との国交を樹立する際に、アジアの軍事バランスを考えて台湾と断絶する代わりに成立させた台湾との武器売却を可能とする国内法です。

この趣旨は中国と台湾が衝突した場合、アメリカは必ずしも介入しなくてもよいという法解釈がなされていますが、現実的な対応としてはやはり東アジアの軍事バランスを考慮して介入がなされるという認識が主流です。

台湾の自由と民主主義の行方

李登輝以降の歴代の台湾総統はほぼ、台湾は大陸の一省に属するものではなく独立した国であるという認識を踏襲しています。すなわち「2つの中国」です。

中国に対しては宥和政策と台湾独立政策の2つの考え方があります。台湾独立政策とは始めから共産党政権との共存は不可能としてあくまでも民主主義を堅持しようとする考えで、現蔡英文政権にみられる考え方です。

宥和政策にしても台湾の独立を前提とした上での協調政策であり、前馬英九政権が典型例として挙げられます。

この選択は台湾国民が民主的な選挙によって選ぶわけですが、最近この選択のヒントとなる好例が発生しました。「香港騒動」です。

この出来事から中国共産党政権の本質的な体質を学び、台湾国民は賢明な選択をしなければなりません。

東アジアにおける貴重な自由と民主主義の旗印は消滅してはならないのです。

おわりに

来年、2020年1月に台湾総統選挙が行われます。

候補は国民党の韓国瑜高雄市長と民進党の現政権、蔡英文総統が挙がっています。

ほぼこの2名で台湾総統選が争われると思われますが、親大陸・宥和色の強い韓高雄市長と、毅然として台湾の自由と民主主義を守ろうとする現蔡総統のどちらに軍配が上がるのでしょうか。

中国現政権は台湾海峡に恫喝のために軍事力を繰り出すでしょうか。台湾の総統選には如何なる国も介入は許されません。

しかし中国はすでに蔡政権の再選を阻むべく台湾への個人旅行を一時停止する経済圧力をかけています。それに対する「かえって逆効果である」とする台湾国民の怒りの声があることに救われます。それにしても何という残念な国なのでしょう。

国際社会は一致団結して台湾に対する暴力的な恫喝、脅し、サイバー攻撃等の兆候を監視する必要があります。

脅しや暴力による拡張主義は断じて許されることではありません。