NATO設立の経緯と意義についてまとめてみました!

トランプ大統領がNATO加盟諸国の拠出金の負担が少なすぎるとして不満を漏らしています。ドイツなどは名指しで非難されたそうです。

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NATOは西側陣営の柱となっている安全保障上極めて重要な軍事同盟です。その隙を突くかのように近年、ロシアによるクリミア半島併合事件がありました。

そのような時にNATOからの脱退を口走っているそうです。

本稿ではNATOとはどのような同盟なのか、その設立の経緯と意義についてまとめてみました。はじめにNATO設立の経緯から解説します。

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NATO設立の経緯

NATOは (North Atlantic Treaty Organization) の略称で「北大西洋条約機構」のことで、本部はベルギーのブリュッセルにあります。

もともとは1948年3月にイギリス、フランス、ベルギー、オランダ、ルクセンブルクの5ヶ国が、戦後のドイツを抑え込み、拡大する共産勢力に対抗するために合意したいわゆる「ブリュッセル条約」を母体としたものでした。

第二次大戦後、東欧をはじめとして西側へ伸びるソ連の拡大は著しく、イギリス、フランスなどの西側諸国はナチス崩壊後の新たな脅威として捉えていました。

このような状況下で翌1949年4月、同じく共産主義を敵対勢力として認識していたアメリカとカナダを加えて北大西洋条約が結ばれ、NATOが創設されました。

NATOは設立当初からアメリカが主導的役割を果たしている西側諸国の軍事同盟です。

加盟国は2019年現在で29ヶ国を数えており、非加盟国のスウェーデンやフィンランド、日本なども協力関係にあります。

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NATOの貢献

NATOの貢献とはどのようなものでしょうか。

西側がNATOを構築し東西の冷戦が進んでいくなかで、ソ連も勢力下の東欧諸国と1955年、モスクワに本部を置く「ワルシャワ条約機構」を発足させました。

これによりヨーロッパは東西の二大勢力に分割されることになります。しかし冷戦が進行していく中でも東西が衝突することは一度もありませんでした。これはNATOの抑止力としての貢献と考えられます。

1962年のキューバ危機など、きわどい事件はあったとしても当時のケネディ政権の断固とした対応と、フルシチョフ政権の賢明な選択により全面戦争の危機は回避されています。

そして結果的にNATOの存在により西側諸国に共産勢力は入り込めなかったことが挙げられます。

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NATOの転機

このような東西の衝突を抑止する役目を果たしていたNATOですが、転機が訪れます。

1989年のアメリカ合衆国とソビエト社会主義共和国連邦両国の首脳によるマルタ会談で冷戦が終結しました。そして一連の東欧革命、ワルシャワ条約機構の解体、ソ連の崩壊へと続き、NATOは当初の存在目的を失いました。

しかし冷戦後も解散することなく、欧州連合(EU)や欧州安全保障協力機構(OSCE)とも連携し、活動目標をテロ対策、地域紛争対策、平和維持活動などに拡大し、地域外活動も加えて現在に至っています。

そしてこのようにNATOがその機能を維持していたのは正解だったようです。

NATOの存在意義

今日、NATOは再び本来の存在意義を見出しました。

ロシアが大国として復活してきたのです。このことは日本ではあまり認識されてはいないようですが、NATO諸国は早くから警戒を強めていました。

ロシアはソ連崩壊後の苦境を経て、21世紀に入ると石油価格の高騰や輸入代替政策による経済の復調、そしてプーチン大統領の長期政権により順調な経済成長を維持しており、周辺諸国への影響力を拡大しています。

ロシアという国の特徴は、国の経済力を示すGDPという数値の上では決して大国とは言えないけれども、国際的に強い影響力を持つことにあります。

その理由には、以下の点が考えられます。

 ●拒否権を持つ国連常任理事国であること
 ●核保有国であること
 ●老獪な外交政策ができること
 ●最高水準の科学技術力があること
 ●強大な軍事力があること
 ●無尽蔵のエネルギー資源があること

そして2014年、NATOの隙を突くかのようにウクライナの領土、クリミア半島併合事件を起こしました。

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このような状況で、NATOは再び冷戦時代と同様に抑止力としての意義を持つことになります。

今度の対立構図は「EU」とロシア主催の「ユーラシア連合構想」です。まさに歴史は繰り返すことになりました。

おわりに

先ごろのG20大阪サミットのことをふと思い出しました。

G20大阪サミットの際のイギリスのメイ首相とプーチン大統領との会談です。

メイ首相は厳しい面持ちで、他国への干渉やサイバー攻撃といった「無責任で安定を脅かす行動を改めよ!」という警告をプーチン大統領に発したそうです。

この背景にはイギリス南部で昨年3月、ロシアの元情報機関員の父娘が神経ガスによる襲撃を受けた事件があります。

メイ首相はこの時更に、ロシアが2018年に黒海で拿捕したウクライナ船乗組員の解放も求めたそうです。

この時のメイ首相の毅然とした姿勢は見事なもので、自由と民主主義の発祥の国としてのイギリスの面目躍如たるものを感じました。

同時に他国への主権侵害を平然と行うプーチン政権には「閉ざされた体制」の底知れない恐ろしさを感じないわけにはいきません。

トランプ大統領はこの辺の危機感をどのように考えているのでしょうか。